• 2008/06/30
  • 執筆者: Yamaoka (1:07 am)

<心声天語>(29)「家庭の事情で結構です」   

日本の茶の間にテレビが普及しだした四十数年前、日本もやっと、戦後の貧しさから抜け出さんとしていた時期だ。白黒テレビで観る料理番組、当時、料理番組は主婦の間でも大人気であった。高校生だった私は、テレビで料理が習えることに「便利な世の中になったものだ」と思った◆どこのテレビ局も、料理番組に力を入れていた。また、料理家の先生たちも、タレントや文化人みたいにもてはやされた。その中に、「江上トミ」という料理家の先生がいた。江上トミさんについては、今でも忘れられない“思い出”がある。思い出と述べたが、お会いしたことは一度もない◆番組が始まった。江上トミさんが『今日はカレーライスです』と言って調理を始めていった。アシスタント役の女子アナが『先生、塩加減は?』と、視聴者が解りやすいように説明を足していく。番組が半分ぐらい進行した時、女子アナが『先生、牛肉はどれぐらい入れるのですか』と尋ねた。すると、江上さんはしばらく間をおいて、やさしい声で『各家庭の事情でいいですのよ』と言った◆まだ牛肉が贅沢であった時代、月に数回しか牛肉が食べられない家庭も少なくなかった。江上トミさんは、牛肉を買えない家庭を思いやろうと『家庭の事情で…』、との機転を働かせた。番組の台本には、《タマネギ2個、ジャガイモ3個、牛肉は何グラム》と記されていたはずである。なにより、台本にないセリフに戸惑っていた女子アナの、あの驚いた表情は今でも忘れない◆人間にとって最も大切な「食」がお笑いのネタになっている時代、貧しい家庭の事情を思い遣る江上トミさんの、あの温もりのある人間味が、懐かしく思い出される。(和光)
※このコラムは前身の『ストレイ・ドック』で一度、掲載されたものが、好評につき、一部手直しし、再度、掲載しました
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